屋島 弓流 奈須與一語

◆『平家物語』の「屋島の戦い」を典拠とし、戦いをテーマとした曲
◆作者・・世阿弥
◆場所・・讃岐  屋島
◆季節・・春 (三月)
◆分類・・二番目物「修羅能」の名作といわれている
◆登場人物
 前シテ  漁翁  (義経の霊)
 ツレ   漁夫 
 後シテ  源義経
 ワキ   都の僧
 ワキツレ 従僧
 間狂言  所の者

〈あらすじ〉

 平安時代末期、源氏との戦いに敗れた平家一門は瀬戸内海に逃げる。
それを追う源義経はついに壇の浦へと追い詰め、屋島の合戦が起きる。

【前場】

 都の僧(ワキ)が西国行脚の道すがら、讃岐の屋島の塩屋(塩を作るための作業小屋)で
休んでいると漁翁(前シテ)と漁夫(ツレ)が漁から戻ってくる。
 漁翁は都の僧だと聞いて宿を貸し、僧に求められて屋島におけるかつての源平の合戦、
とりわけ景清と三保谷の四郎の「錣引き」、義経の忠臣・佐藤継信の討死などを詳しく語り、
自分は源氏方の大将義経であることをほのめかして消える。

(中入り)

通常の間狂言は、三保谷と景清の「錣引き」の話を座ったまま語りますが、      
小書(特別演出)がつくと大きく異なる。
「奈須與一語」になると、源氏方の弓の名手・奈須與市が、波に揺れる平家方の
船上に立てられた扇を射落とす場面を、所作を付けて演じます。
何人もの人物を一人で演じ分ける演出がみどころ。

【後場】

 夜が更け、僧の夢に甲冑姿の義経の亡霊(後シテ)が現れ、妄執ゆえに今なお
現世をさまよっていると言い、海に落とした弓を命がけで取り戻した「弓流し」の様を語る。
 更に、壇ノ浦で舟戦を戦った能登守教経との修羅道での戦いが展開するが、やがて夜も明け、僧の夢はさめるのだった。
小書『弓流』になると、通常は入らない囃子事があり、弓にみたてた扇を落とす型を演じる。